冬の北海道で死にかけた話

嫁子供が実家に帰るということで、私は浮き足立っていた。夜の街に繰り出すことも考えたが、それはいつでもできる。今しかできないこと、それは旅に出ることではないか。

私は雪の降らない街で生まれ育ったこともあり、雪景色に惹かれる。とりわけ、大自然そのものである北海道の雄大さは良い。どこまでも続く白、命の気配も感じない、のみ込まれてしまうような白。自然と自分のちっぽけさを感じもの思いにふける。何度もその情景が思い出されるほどに冬の北海道は好きだ。

これまでも、北海道は札幌のみならず、夕張、旭川、網走、知床、釧路、根室、帯広に訪れた。まだ訪れたことがない場所、稚内に行くことにした。一泊二日、弾丸だがあまり観光する場所もないだろうしちょうど良いかもしれない。

羽田から直通で稚内へ。1日1往復の便しかないが、それもまた秘境らしくて良い。東京に住んでるうちに行っておくことにした。

羽田までの電車に揺られているとメールが届いた。「天候により欠航の可能性あり」東京はこんなに天気が良いのになあと思いながらも、まあ欠航なら空港で長岡食堂でも食べて池袋にでも繰り出せばいいかと思っていた。

結局、時間どおりに飛行機は出発することになったが、「着陸できない場合は羽田に引き返す」という条件付きだった。

2時間くらい揺られただろうか、目を覚ますと、外は霧に覆われていた。まったく景色は見えず灰色に覆われていた。時間的にはそろそろ到着してもおかしくないのだが、まったく下降する気配がない。むしろ、ゆっくりと機体が上昇している気がする。これはいよいよ本当に羽田に引き返すのかと半ば諦めていたそのとき、ふと霧が晴れ、はるか眼下に山が見えた。

なんとか稚内に到着した。機内からでもよく分かる、雪がしっかり降っておりとても寒そうだ。

スマホの機内モードを解除するとメール通知が入った。「明日の稚内⇛羽田は天候不良のため欠航となります」

ええ!?到着した瞬間に帰れないことが決まった。週明けはもちろん仕事があるのだが、PCは持ってきてないし休暇を取るしかないのか?

考えるのは夜にして、とりあえず予約していたレンタカーを借りた。初日は、最北端の宗谷岬を目指すがその前に猿払村まで足を伸ばして名物のホタテを食べることにしていた。

空港を出てすぐ山を越える道に入ったのだが、真っ白に吹雪いておりめちゃくちゃ怖い。何より他にクルマがいない。ただでさえ慣れない雪道だが、この機会を逃したら稚内に来れることなどないだろうから、行くしかないのだ。

なんとか1時間ほどで猿払村の道の駅に到着。まったく観光の雰囲気がないんですけど。。。

そもそも、施設はほぼ冬季休業していた。下調べせずに弾丸旅行をするとこういう目に遭うのだ。

しかし、かろうじてレストランは営業していたのでホタテ丼を食べた。いや〜うまいですね、イクラは安いやつだけどホタテはちゃんとプリプリでうまいです。

店員さんに猿払村の観光はなにかあるかと聞いたが、そもそも冬はやることないし、なにより天気が悪いから景色も良くないと言われたので、さっさと宗谷岬に行って稚内市内でのんびりすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

事故った。

 

 

 

 

 

左にスリップしたため右にハンドルを切ったら制御不能、ガードレールにズドン。

ほんとにスローモーションに見えるんですね、途中で絶対にぶつかることがわかるあの恐怖。。。体は痛かったものの、それほど大事ではなさそうだったので無理やりクルマを動かして近くのセイコーマートへ。山道じゃなくてよかった。。。というか、ガードレールがある場所でよかった。

警察やレンタカー屋に電話し、車はレッカーで運ばれていった。パニックで写真を撮っていなかったが右前方の外装がすべて吹き飛んでおり機械がむき出しになっていた。あと、運転席のドアは開かなくなっていた。

ちなみに、猿払村から稚内への移動には保険がおりないため、自分で手配しろとのこと。バスは終わってる時間だったし、レッカーの運転手に頼み込んだが拒否された。もう1人乗れるスペースあるのに!そんな臭かったか!?

タクシーを使うのも手だったが、猿払村にタクシーなど存在しないため、稚内から呼ぶ必要がある。片道1時間はかかるし金もないので、稚内への移動は諦め、猿払村の道の駅のホテルに泊まることにした。そこまではパトカーで送ってもらいました、いろいろありがとうございます。稚内のホテルもキャンセル料請求されなかった、よかったあ。。。

ということで、稚内旅行初日、猿払で夜を越すことに。

クルマも失い本当にやることが無いので明日の予定を考えた。バスで稚内に戻ることも考えたが、飛行機も飛ばないしさらに天気が悪くなるなかで観光も難しいだろう。いっそのこと、南下して旭川空港から帰るのもいいんじゃないか。

ホテルのフロントでバスの時刻表をもらった。ちなみに、予約制とのことで電話をしたが「まだ猿払にバスが戻ってきてない。天気が天気なので、明日も出るかわからない、決まったら連絡する」とのこと。

あれ、そもそも猿払村から出られない可能性があるのか!?それは耐えられない。。。

とはいえどうしょうもないので寝ていたら着信が。「バスが戻ってきたので明日は出る予定」とのこと。なんとか一安心だが、バスの時間は6:13分とのこと、これを逃したら次はありません。

右端が旭川行きの便です

翌朝、ホテルのフロントでチェックアウト。スタッフのおじさんからは、「天気は最悪だから吹っ飛ばされないように、遭難するなよ」とのアドバイス。

ちなみに、冬に来る場所じゃないし、ホタテ漁はこれかららしいです。昨日食べたホタテは去年の冷凍物ってこと!?通販でいいじゃん。。

玄関を空けたらこんな感じ。。。突風が吹いていてこの世の終わりです、前も見えないし。そもそも、このフロントから道路までが50mはあるし、バスは道を挟んだ向かい側です。

これ、大丈夫か?そもそもこんなこと想定してないし、雪遊びをするつもりもないので普通のスニーカーだし、なんなら靴下はくるぶしが出ています。

え、死ぬ可能性あるのかこれ。

怖いけど、なんとかなるかな。さっきバス会社に電話したら予定どおりバスは出発したと言ってる。確かに吹雪だが、道路上にはバス停ボックスみたいなのがあるはずだから、そこにさえ辿り着けば雪と風を凌げるはず。

猛吹雪のため実際の写真はありませんが、晴れてたらこんな感じ。奥の緑のボックスまでたどり着きたい

意を決して吹雪の中を出発。腰をかがめて吹き飛ばされないように。。

そもそも、数歩進んだ段階で足が沈み膝まで雪に埋まる。この時点で想定外だが、道路は除雪されてると聞いたし、そこまで距離は遠くないから前に進むのみ。くるぶしに雪が付着しまくりめちゃくちゃ冷たい、手で払うがあまり変わらない。。

なんとか道路まで着いた、吹雪いていて遠くまでは見通せないが車は来てなさそうので急いで渡る、緑のボックスはどこだ。早く中に入ろう。あったあった、あれ?

自分と歩道の間に除雪された雪が果てしなく積まれており、緑のボックスにたどり着けない。詰んだ、どう頑張っても中にはいれない、車道の隅でバスを待つしかなくなった。

死ぬかもしれないという思いと、あと5分くらいでバスが来るからなんとかなるはずという思いが交錯するなか、凍傷になりかけながら動画を撮りました↓

ちなみに、バスは予定より遅れ、この状況が10分弱続きました。その間に対向車や除雪車も通ったのですが、どうみても遭難している私に声をかけることもなく。。。今回の旅で何度も感じましたが、北海道の人は別に優しくない。

なんとかバスに乗って一命をとりとめました。ここから5時間かけて旭川へ到着。

すぐに飛行機で羽田へ帰ったため、観光らしい観光はしていません。

ちなみに、当初の稚内発は1.7万円でしたが、旭川発は5.2万円でした。

二度と冬の北海道なんて行くか

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